1 最近の新人はよくわからない
「最近の新人は、やる気がないんじゃないか」 顧客先の従業員に、「何か困っていることがありますか」と聞いたところ、このように言われました。 どうやら、部下の新人が思うように動かず、苦戦しているようでした。 周りの同僚たちからも同情されるくらい、部下とのやりとりが大変だったようです。 「最近の新人は…」というのは、いつの時代も同じなのかなと思います。 私の時代もそうだったからです。 ただ、私の世代と、部下の世代、今の世代と、その時代、その時代によって、 新人も少しずつタイプが違うようです。 それでも共通しているのは、「最近の新人は…」で表される言葉です。 だから、「あまり気にする必要はないのではないか」とアドバイスはしたものの、 本人にとっては、とても気になるところでしょう。
2 部下からの反発
かくいう、私自身の若い頃を思い出してみると、苦労したこともありました。 部下が反発してきて、険悪な関係になったことがありました。 特別、言い争いをしたわけでもなく、自分のほうとしては思い浮かぶことはないのですが、 不注意な言葉を発したんだろうと思います。 何かがきっかけとなって、感情的なもつれになって、ずいぶんと苦労しました。 何年か経つと、何もなかったかのように解消はしましたが、問題を抱えているときは大変なものですね。 そうした経験も踏まえて、アドバイスすることがあるとすれば、 目の前の現実と向き合って、自分の言動を振り返ってみることです。
3 相手のミスを指摘するのではなく、自らの至らなさを謝る
先に挙げたのとは別の部下は、よくミスをしていました。 そういうミスについて注意をしても、なかなか直りませんでした。 その部下は、小さなことにはこだわらず、失敗してしまったら 「起きてしまったことは、しょうがないじゃないですか」と言う部下でした。 こちらから見ると、注意不足のように見えても、本人にとっては まじめに仕事をしているつもりのため、なかなか聞き入れられないのです。 あるときも、不注意でミスをして、顧客に迷惑をかけてしまったことがあります。 その時は、彼に対して、注意するのをやめました。 代わりに、「残念だ。自分はそんなふうに教えてきたつもりじゃなかった。 君は本当はちゃんとできたんじゃないか。申し訳ない。」と伝えました。 要は、相手を責めるのではなく、「自分の教え方が悪かった」と、謝ったのです。 すると彼は、顔色を変えて、何も言いませんでした。 不思議なことですが、それから彼のミスはなくなりました。
4 相手に映っているのは自分の姿
この2つの事例で、私が感じたのは、相手が表している姿は、 「自分の心の投影」ではないかということです。 自分自身が何気なくやっていることが、相手に伝わり、 その相手から反発という形で表現される。 それは、自分の姿を映しだしている鏡だということです。 そう考えてみると、それまでに起きていたことは納得できます。 自分の態度が相手にどんな影響を与えているのか。 相手の姿を通して、自分の行動がどういうものかを教えてくれているのです。 そうなると、深く反省するしかないですね。 そのように、気づかされた時期がありました。
5 部下に表れた仕事姿勢
彼らは、私が所属していた会社の関連会社の社員でした。 勤務するビルは違っていましたが、ある種の請負のような形で、 同じプロジェクトに携わっていたのです。 ある時、彼らの上司2人が、請負価格の値上げ交渉にやってきました。 要点を簡潔に述べると、その際にこんな会話をしました。 「彼らは毎日、夜遅くまで働いて、土曜日も出社したりしています。 長時間働いているので、請負金額を値上げしてもらえませんか。」 そこで、私のほうからはこのように返しました。 「夜遅くまで働いて、休日出勤もして、長時間働いているのでしたら、 もっと効率を上げて働くように言ったらいかがですか。 もしかしたら、言っていないのではありませんか。」 「はい、言っていません」と言うので、こう言いました。 「長時間働くのがよくないのだったら、もっと効率を上げるように彼らに言ってください。 彼らならできると思いますよ。」 こういう話をしばらくしたあと、それを聞いた上司たちはこう言ったのです。 「今日の話を聞いていて、彼らがなぜこんなに仕事をしているのか、 わかったような気がします。 実は、うちの部署には、彼ら以外にもたくさんの従業員がいます。 ところが、彼らだけ、周りの人たちと違うのです。 毎日、夜遅くまで残業したり、休日出勤したりするのも彼らだけです。 しかも、自分から進んで残業したり、休出したりしている。 それだけじゃないんです。 電話がかかってきたら、音が鳴るやいなや、パッと電話に出る。 仕事ぶりも、ほかの人たちより、はるかに元気なのです。 職場には、ほかにもたくさん人はいます。 やっている仕事が違うならわからなくもないですが、 みんなやっている仕事は同じようなものです。 ところが、彼らだけが違うんです。 『彼らだけ、周りの人たちと違うのはどうしてなんだろうね』と、 我々はいつも話していたのです。 今日来て、話をしていて、その理由が何となくわかった気がします。」 上司たちはそのように言って、帰って行きました。
6 自らの行動や言動を振り返る
この話を聞いて、考えてしまいました。 自分が若いころは反発されていたこと。 ミスしたことについて、相手を責めるのではなく、自分の不十分さを反省したこと。 そうこうしているうちに、彼ら自身も、周りの人たちと比べてもわかるくらい、成長していたこと。 それを、このような形で、教えてくれたこと。 ここに至るまで、13年間が経っていました。 部下を持って、成長したのは自分自身だったのです。 その成果が部下に表れて、それを上司たちが教えてくれたということです。 だから、部下を持って、悩んでいる人がいるとしたら、私ができるアドバイスはこうです。 目の前で起きていることが、自分に原因があるとしたら、その理由は何だと思いますか。 その現実を変えたいと思うのであれば、どうするのがよいと思いますか。 相手を通して表れている目の前の現実に向き合い、 自らが思ったこと、語ったこと、行動したことを振り返ってみてください。 そして、どのようにするのがよいかがわかったら、やってみてください。 きっと、目の前の現実を変えることができますよ。
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