1 コンサルタントの位置づけ 近年は「コンサルタント」がいろいろなところで使われるようになり、〇〇コンサルタントがたくさん出現しました。 言葉の意味合いが広がってきたのかと思います。 それはそれでいいことだと思うのですが コンサルタントとは何かを簡単に言うと、「問題解決屋さん」と言ってよいのではないでしょうか。 ソリューション営業という言葉もありますが、顧客の抱える課題、問題に対して解決策を提示する。 そういう役割でしょう。 コンサルタントとして仕事をしている人たちの中で、戦略コンサルタントという人たちは、会社の大きな方向付けをして、企業あるいは事業を成功に導く、そういう仕事をしていると言ってよいかと思います。 2 会社の中で一番難しい問題に取り組んでいる人 私自身がコンサルをしようと思った理由は、顧客の抱える課題解決の仕事をしていたからです。 会社の中で一番難しい問題を抱えているのが社長だとすると、 「社長の抱える問題解決を支援しよう」 「これから伸びる、若い経営者の抱える問題解決を支援しよう」と思ったのが出発点でした。 3 「勉強しない人を教育するしくみ」を考えてほしい 事務機器の社長と面談していたとき、社長が次のように言いました。 「当社の従業員は全然勉強しない。 お客さんとの会話も下手で、人づきあいが苦手だ。 こういう人たちを教育するしくみを考えてもらえませんか。」 社長は、自社が抱える問題を解決する提案を求めたのです。 4 顧客が「ぜひ、やりたい!」と言う提案を考える 2週間の期限で、考えに考えました。 「単なる教育プログラム」を提案してもダメだなと思ったのです。 「勉強しない」という人たちに対して、「教育をしましょう」といっても、通用しません。 そこで、「顧客が『ぜひ、やりたい!』と言う提案はどういうものになるか」を、徹底的に考えました。 その時に考えたのは、「従業員たちは、顧客と無理に話をする必要はない」ということです。 人は、苦手なことを強いられても、うまくできないからです。 逆に、自分の得意なことだったら、雄弁に話すことができるものです。 だったら、「そのような場面を用意すればいい」。 これが、コンサル提案の骨格となりました。 5 得意領域を伸ばした新規事業提案 教育の対象となる従業員たちは、事務機器のサービス・エンジニアでした。 定期的に、顧客の事務所を訪問して、事務機器の保守点検を請け負っていました。 だったら、彼らの得意なことを生かせばいい。 彼らが得意な専門領域を生かして、「顧客の抱えている課題を解決するお役に立てる仕事ができればいい」と考えたのです。 そこで提案したのは、彼らが訪問している企業の「社内ネットワークを構築する提案ビジネス」です。 当時はまだまだインターネットが普及しているとはいいがたく、社内にLANを引いている会社も少なかったのです。 サービス・エンジニアたちは、顧客の社内にお邪魔しているわけですから、顧客の社内ネットワーク事情もわかります。 そこで、「小規模の社内ネットワークを構築する提案ビジネス」と「そのための教育プログラム」をセットで用意することを提案したのです。 サービス・エンジニアは、事務機器の保守点検が終わった時に、パンフレットを置いてくればよいようにしました。 この提案に、その社長は飛びつきました。 提案書を見たとたん、顔色がパッと明るくなりました。 これくらいなら、サービス・エンジニアでも簡単にできます。 6 関心があるお客さんが聞いてくるビジネス お客さんはインターネットに興味はあるのですが、どういうものかがわからないので質問します。 「それはいったいどういうものなのですか。」 「どういうメリットがあるのですか。」 「どんなふうになるのですか。」 「いくらかかるのですか。」 サービス・エンジニアは、自分から話をしなくても、顧客から話しかけてくれるのです。 自分たちの専門領域ですから、話をすることに何の躊躇もなく、簡単に答えることができます。 しかも、新しいインターネットの技術について学ぶ理由も、そこには存在します。 つまり、「新しい技術を学ぶという教育プログラム」と、それを「販売するという新規事業」をミックスした提案をしたのです。 7 大成功した事業提案 この提案は、少なく見積もっても、初月から毎月約2億円ほどの売上と、10%程度の営業利益が見込まれるという試算も提示しました。 顧客からは、「うちに来て、一緒にやってもらえませんか」とまで言われました。 6年くらい経ったある日、新聞の夕刊を見ていたら、その会社の事業紹介が出ていました。 提案したビジネスは好調に伸びて、その会社の売上の半分を占めるほどの事業に伸びたことが書かれていました。 事業は大成功していたのです。 8 「社員の成長」と「事業の発展繁栄」の両方を実現する コンサルタントとして、問題を解決すること。 これは当たり前です。 その解決策が、会社の業績を伸ばすこと。 これも当たり前です。 その施策が、従業員の成長につながること。 これが大事です。 つまり、「社員の成長」と「事業の発展繁栄」の両方に寄与する。 それが戦略コンサルタントとして期待される役割です。
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